静まり返ったリビングに、妻とまだ幼い子どもの背中が見える。声をかける勇気も出ず、ただ鞄を持っ　　　　て玄関の扉を開けた。結婚前は、なんとかなると思っていた。
　愛があれば、大丈夫だと信じていた。でも現実は違った。すれ違い、怒鳴り合い、沈黙。何度も修復しようとしたが、心はすり減る一方だった。今になって思う。結婚前に、もっとお互いの価値観や未来を語り合い、
　学んでおけばよかったと。プリマリタルカウンセリングを受けていたら、違う道があったかもしれない。遅すぎたけれど、これは逃げじゃない。ただ、壊れる前に守れなかった自分の弱さを受け止めて、もう一度やり直すための決断だ。さようなら、大切な家族。ごめん。